※ エロイ描写が混ざっています。
18歳未満の方の閲覧は堅くご遠慮願います。
Honey Trapのバレンタインのお話と連動してますが
単品でも美味しく頂けます^^
マシュマロタイム
「あ、イギリス?」
「……なんだ、ヒゲか……何の用だ?」
「おいおい、挨拶くらい可愛く出来ないのかよ」
「お前に振りまく愛想は1ミリもないが?」
「つれないねえ〜」
電話越しにフランスが苦笑しているのが伝わって来た。
「用がないなら切るぞ?」
「ちょっとちょっと、待ってよ切らないで!」
笑うのをやめて慌てた様に声が追ってくる。
それが少し小気味良かったので待ってやることにした。
「……で?」
「ああ、来週の日曜うちまでおいでよ」
「はぁ?」
「仕事休みだろ? お菓子用意してるからさ」
おいで、と口に乗せた言葉は誘うそれだが、ニュアンスは「おねがい」だ。
表情や仕草を見なくても、付き合いが長いから分かる。
語尾にゆくほど甘くなるその口調に、背中がムズムズとする。
……悪い気は、しない。
「し、仕方ないから……い、行ってやるよ!」
「おお! 美味しいお菓子用意して待ってるからな!」
「……おう」
少し声がうわずってしまったことを揶揄われるかと思ったが、何かやたらと嬉しそうなフランスが、そこを突いて来ることはなかった。
調子が狂うなと思いながらも、自分は揶揄われることが趣味ではない。ぶんぶんと頭を振り、気を取り直す。
テンションの高いフランスのつまらない話に相槌を打ちながら、ふと視界に入った時計の時刻を確認し、今後の予定を立て直す。フランスの話は長い。
強引に切ることも出来るが、無駄に嬉しそうなので少し可哀想な気がした。ホトケゴコロってやつだ。日本に教えて貰った。
しかし、いつ途切れるのか分からない会話に付き合ってやるのも限界がある。
チラッと視線を動かせば、さっき時計を見てからさらに十五分経過している。話が終わる気配はない。
ホトケの顔も三度……これも日本に教わった。
もういいだろうと、フランスの話を強引に断ち切る様に口を開いた。
「で、何時に行けばいいんだ?」
「え? ああ、じゃあ、三時に」
「わかった」
イギリスは時間を確認すると受話器を置いた。
電話がかかって来てからすでに三十分以上が経過していた。
約束をした午後三時に、イギリスはフランス宅を訪れた。
手には今朝庭の手入れをしている際に摘んだピンクの薔薇の花束を抱えている。
別にフランス如きに気を利かせてやる必要もないけれど、自分は紳士だし……手ぶらで行くのに気が引けただけだ……
それに、何より、今年初めて花を咲かせたこの新しい薔薇を見せびらかしたかっただけなのだ。他意などない。
イギリスは綺麗に綻んで、可憐に咲き誇っている薔薇を眺めると、その花弁にそっと触れて微笑んだ。
そして、玄関のチャイムを鳴らした。
インターフォンの電子音が響くのを聞きながら少し待つと、ほどなくフランスの声が機械越しに聞こえて来た。
『玄関開いてるから、そのまま入って来てくれる?』
「……ああ、わかった」
いつも暑苦しいくらいに出迎えるフランスが来ないのは珍しい。迷惑極まりない行為なのだが、少し拍子抜けしながらイギリスはドアを開けて中に踏み込んだ。
玄関を開ける前から甘い匂いが外に漏れていたが、中に入るとその香りは強くなった。くんっと鼻を嗅いで、今日のお菓子は何だろうかと想像する。フランスのお菓子は好きだ。
甘い匂いに引き寄せられる様に足を進め、キッチンに人の気配を感じ覗き込んだ。
「いらっしゃい、坊ちゃん」
フランスも同様に気配を感じていたのだろう。くるりと振り返りウインク付きで挨拶をしてきた……ウインクはいらない。
「おう、勝手に上がってるぞ」
フランスの言葉通りに行動したに過ぎないが、そこは礼儀。
一応一言告げておく。
フランスはふっと笑うと柱の時計に目をやった。
「お、さすが時間通りだな」
フランスのその呟きにイギリスは違和感を覚えた。
いつもなら前もって約束をしていた場合、イギリスが来る頃に合わせてお菓子や料理が出来上がっているのだ。
なのに、今日は違う……
フランスは最近のお気に入りらしい濃紺のエプロンを身に纏い、ホイッパーを右手に、ボウルを左手に持っている。
明らかに何らかの調理の途中だ……
甘い匂いはいつもの様に出来上がったお菓子のものだと思っていたのに、今日はどうしたことだろうか?
……何か急用でも出来て間に合わなかった、とか?
髭のことなどどうでもいい、とりあえず先にこれを渡してしまおう。イギリスは後ろ手に持ち、フランスから見えない様にしていた薔薇を突き出した。
「……て、手ぶらもなんだからな! やるよ」
「お、ありがとう、坊ちゃん」
フランスはボウルとホイッパーをテーブルに乗せるとイギリスから薔薇の花束を受け取り、呟いた。
「ピンクの薔薇か……お前らしいよね」
「はぁ?」
囁くようなそれはハッキリ耳に入って来なかったが、何か聞き捨てならないようなことを言われた気がして睨んでみた。が、笑顔で躱された。訊き返してやろうとしたが、さらに、続いた言葉がイギリスを喜ばせ、それどころじゃなくしたのだ。
「お、これってもしかして新種? なんか見たことない気がするんだけど?」
花弁を覗き込み、ちょんちょんと突つき、匂いを嗅ぎながらフランスが訊ねる様に言った。綺麗だね、と花にも囁いている。
「よ、よく気付いたな! バカ髭にしては上等じゃねぇか!」
薔薇を褒められると自分のことの様に嬉しい。
イギリスは興奮気味に薔薇の名前や特徴を語った。
それにフランスはにこやかに応えながら、花瓶を取り出し、
花を傷めないように包装を解き、花瓶に生けた。実に淀みない手つきだった。
しかも、フランスはフランスの家の中でイギリスが一番気に入ってる花瓶にその薔薇を生けたのだ。
生けられた薔薇を見て、イギリスは満足そうに頷いた。
「イギリス!」
うっとりと薔薇に見入っていたらしい、イギリスはフランスに呼びかけられて振り返った。
「なんだ?」
「うん、準備出来たって言ったの」
「……準備?」
「そう、準備♪」
……一体何の?
問う様に首を傾げるイギリスを無視して、エプロンを脱いだフランスが、イギリスの手を引いていそいそとキッチンを抜け出そうとした。
手にさっきまで調理してたらしいボウルを持っているのが気になった。
……ものすごく嫌な予感がした。
連れて来られたのはフランスの寝室だった。嫌な予感は確実に増してくる。
まんまとイギリスを寝室に連れ込んだフランスがにこにこ、いや、ニヨニヨか……しながら口を開いた。
「今日、何の日か知ってる?」
「? ……特に何もないと思うが?」
「うんうん、イギリスではそうだよね」
勿体振った言い方が気に触って足を踏み付けてやると、髭はすぐに口を割った。
「今日はホワイトデーなのさ」
「ホワイト、デー?」
「そ、ホワイトデー♪」
はて、どこかで聞いたことがあるような、ないような……
首を傾げているとフランスは嬉々として説明しだした。
「ホワイトデーは、バレンタインにチョコを貰った人がお返しをする日なんだ。日本の風習なんだけどさ……イギリス、バレンタインは日本風にチョコをくれたから、俺もそれに倣おうと思って、ね……」
ぱちりとウインクするフランスが気持ち悪い……明らかに良からぬことを考えているのが透けて見えている。
じりっと一歩後ろに下がりかけたイギリスの身体を、フランスは掴んだままの手を引いて引き寄せ、腕の中にホールドする。
抗議の為に開きかけた唇は、間近に迫ったフランスの顔に驚き、一瞬躊躇した間に容易く奪われてしまう。不覚。
胸に手を突き、押し返そうとしたが、そういえば二週間以上会ってなかったなと頭に過り、何となく味わってしまった。
キスは好きだ、気持ちいい。
フランスとは主導権の奪い合いのようなキスをすることも多いけれど、流されるのも悪くない。
何より、久しぶり、だから……
自分に言い訳をしながら身を任せていると、気付けば上着は脱がされ、ネクタイは緩められ……今は上から三つ目のシャツのボタンが外されたところだった……全く油断ならない。
「……で、ホワイトデーのお返しって何なんだよ?」
今度は流されずに押し返すと、フランスは苦笑しながら一歩引いた。
「ああ、いろいろあってさ……バレンタインはチョコだけど、ホワイトデーはクッキーやキャンディやマシュマロが一応主流かな? お菓子会社の思惑だしひとつに定まってなくてね」
「ふーん……」
日本のところもいろいろとあるのだな、イギリスは東洋の島国の友人の穏やかな笑顔を脳裏に描きながら思った。
「で、今回おにーさんはマシュマロを選んでみました〜」
じゃーんと、イギリスの前に差し出されたのは、先程抱えてフランスが持って来たボウル、訪ねた時にホイッパーでかき混ぜていたボウルだ。
「……これが?」
イギリスの知っているマシュマロは固形で一口サイズの大きさで、周りに粉がまぶしてあるものだ。
このボウルの中にあるようなホイップのような、メレンゲのようなものではない。
「……」
不信感露にフランスを睨め付けてやれば、楽しくて堪らない気持ちを堪えているような、うずうずとした様子が窺えた。
……絶対に碌でもない。
「そう、これがこれから最後の味付けを加えてマシュマロに変身するのさっ!」
歌う様に話すのには寒気すら覚えた。
じりっと一歩後ずさって間合いをとると、イギリスは向かい合ったフランスの脇を通りドアへ駆け出した。
が、思いの外素早い動きをしたフランスに腰を攫う様に捕まれ、駆け出したエネルギーも上手く利用され、ベットに沈められた。
……この行動の早さを普段から発揮出来ればいいのに……
外見といい、こいつは能力の無駄遣いばかりしている。
仰向けにベッドに転がされ、上に伸し掛かって微笑んでいる無駄に整った顔に不覚にも見蕩れそうになって、イギリスは慌てて視線を逸らした。
その間にも、油断ならないフランスはイギリスの服を脱がしにかかっていた。途中まで外されていたシャツのボタンはあっという間にすべて外されていた。
「……おい、こら」
「んー?」
「何やってんだよ……」
「最後の味付けの準備さ……ほら、腰浮かして……」
露になった胸に口付けられて、意識が逸れたせいで、うっかり言われるままに腰を浮かしてしまった。すかさずスラックスと下着を抜き取られ、迂闊だった自分に後悔する。
ちゅっちゅと啄む様に胸の突起を含まれ、キスされ、徐々に身体がそれを快感と認めていく。
胸への愛撫を続けながら、脇腹を撫で上げられ、思わずビクリと身体が跳ねる。過剰な反応にクスリと笑われたのが胸に触れた唇から伝わって来て悔しかった。
腹が立って髪をぐいと引っ張ってやれば、何を勘違いしたのか、フランスは伸び上がって顔を近付け、イギリスの唇をキスの対象に定めた。
キスなど強請っていない、けれども、そんな風に目を細めて優しく触れられては抵抗がしにくい。だから、イギリスは甘んじてキスを受け入れるのだ。
「……っ、ふぁ…」
徐々に深く重ねられる唇、肌を撫で、熱を広げる様に動く指先、フランスの手管に煽られて、ゆっくりと身体に快感の火が点っていく。
フランスとこうして身体を重ねる様になってからは、以前よりも自慰をする回数が減った。だから、反応が早くても仕方ないんだ。フランスのせいだからじゃない、自分のせいだ。
訳の分からない思考になりつつあるのを感じながら、久しぶりにフランスの体温を感じる。
優しく触れられる気持ち良さに目を瞑り、うっとりと流されかけたその時、ペチャリと胸に慣れない感触が襲った。
「!?」
驚いて目を開けて確かめると、胸にボウルの中身が塗り付けられている。
フランスがマシュマロと呼んだ、それが。
「お、お前また、何やってんだよ!!」
げしっと腹を蹴り上げようとしたが、腕でガードされた。
にやっと笑われたのがムカついて、頭突きをお見舞いしてやった。決まった。でも、自分も痛い。
チョコレートを塗りたくられた先月のことが蘇る……
学習能力がないのはもしかしたらフランスではなく自分なのかもしれない……いや、でも、こんな変態じみたことはやる方が悪いに決まっている。
「だから、最後の味付けだって……」
これ言うの三回目だぜ? って、笑われても知るもんか。
意味が、意味が分からない行動の意味が!
「ほら、マシュマロの味、するだろ?」
胸にべっとりと塗られたホイップのようにふわりとした白いそれを、フランスは指で掬ってイギリスの口元へ運んだ。
掬う際に乳首を擦ったのは絶対にわざとだ。ムカツク。
口元に運ばれた白いそれをイギリスは見つめた。
光沢のある白いそれからは甘い香りがしている。
これは本当にマシュマロなのか、さらに近付けられた指先にイギリスの好奇心の方が負けた……
ぱく。
口を開けてフランスの指先に食いつき、白いふわふわを舐めた。ほんわりと甘い味が口内に広がる。
……確かにマシュマロの味かもしれない。でも、マシュマロは味よりもあの独特の食感の印象の方が強い食べ物だと思う。
これをマシュマロというのは少し違う気がする……
「……味は確かにそうかもしれないが……違う、ぞ?」
「うーん、まあ、ねえ」
フランスは苦笑しつつ、自分もふわふわを掬って食べた。
「あっ……」
勿論ボウルからではなく、イギリスの胸からだ。
フランスの爪が乳首を引っ掻いて、思わず声が漏れる。
フランスがそれを聞き逃すはずもなくニヤリと笑う。
悔しい、こんな変態に翻弄されるなんて……
きっと睨んでやるも、さらりと受け流してフランスは続けた。
「ま、今はらしくないけど、段々それっぽくなってくよ」
「……はぁ?」
「マシュマロってさーゼラチンで固めるわけよ」
「……」
「ゼラチンはそれでさ、室温でもちゃんと固まってくれるわけ」
「……」
嫌な予感はフランスのセリフでどんどんと確信へと変わっていく。つまり、これが……
「そうそう、最後の味付け♪」
イギリスを指差し、さも嬉しそうに語るフランスが憎い。
そういえば何となくさっきよりもふわふわが若干固くなっている気がする……憎い、フランスが憎い……
変態は撲滅するべき!
そう決意し、蹴りを入れようとしたが、またもや躱された。
さらに、躱した際にボウルへと手を伸ばし、新たに掬ったマシュマロのもと、とういか固まる前のマシュマロを手にじりじりと迫ってくる。
なんということだろうか……
しばらくベットで互いに間合いを詰めながらじりじりと攻防を続けたが、胸に塗りたくられたマシュマロに気をとられて油断した隙に抑え込まれた。
「ひっ」
身構えたが、さっきの様にべったりと胸に擦り付けられたりはしなかった。
ゆっくりと近付いた指先が、頬にマシュマロを少し落とす。
それをフランスがぺろりと舐めた。
頬に受けた舌の感触に眉を顰めると、宥める様に眉間に軽いキス、それから唇に移った。
甘い味のするキスに、イギリスはまた少し警戒を緩めてしまった。ゆっくりと繰り返されるキスに、身体がだんだんと絆されて、与えられるそれを快感と認識する。
激しくはないけれど、気持ち良いキスに、うっかりフランスに擦り寄る様に身体を寄せてしまったのが悪かったのか……
フランスの手が、イギリスの下肢へ触れた。
「ひゃっ!」
大事な部分がフランスの手に包まれ、白いふわふわが纏わり付いた。
「……んんっ」
お風呂で石けんの泡に包まれるのとはまた少し違う。それよりも少し重くて窮屈な感じがする。
恐る恐る見てみれば、最初はまだ少し傾けると流れ落ちそうなクリーム状だったそれは、固まりかけているのだろう……
まだ固体と液体の間のような状態だが、べたりと張り付く様に自身に絡み付いている。
フランスは、イギリスに擦り付けた後の自分の手が気になるのか、残ったマシュマロを舐めとっている……
げんなりしながらフランスを見つめていると、「食べる?」 と指先を近付けて来ようとした。
冗談じゃない。
白けた目で見つめてやると、苦笑してベッドサイドから取り出したタオルで手を拭いた。
「……おい、それ寄越せよ」
「ダーメ」
ムカツク受け答えの後、フランスは自分だけがマシュマロを拭くと、タオルをベッドの下に放り投げた。
そして、身を屈め、白いふわふわのくっついたそこを、イギリスの陰茎をぱくりと銜え込んだ。
「うわっ!」
ビクンと震えて、思わず膝を閉じる。
フランスの髪が内股に当たってくすぐったくて、また開けようとして、それも恥ずかしくてどうしていいか解らなくなった。
ふるふると震える内股に気付き、フランスが撫でながら、イギリスの陰茎に絡んだマシュマロを喰む。
絡み付く舌の感触に、マシュマロを食べられているのか、自身を食べられているのか分からなくなる。
「……ひっ……やめっ…!」
絡み付いたマシュマロを食べながらのフェラチオは、いつもされているのとはまた違う。舌や唇の動きが違うから、無駄に翻弄される……
「……あ……っ」
銜えられたそこが、自分の意志とは関係ないスピードで高まっていくのを感じる。すでに充分に膨らんだ部分が、早く熱を解放したいと訴えている。
下肢に絡んだマシュマロを、食べ尽くしたら解放されるのだろうか?
そう思い、背けていた視線を下肢へ向ければ、白いふわふわはもう殆ど無くなっていた。
ホッとして息を吐いて再び目を開けば、フランスと目が合った。悪戯っぽく笑う目が許せなくて、髪を毟る様に引っ張った。
「いてて、痛いってば!」
そもそも、ホワイトデーって、自分がお返しされる日ではなかったのか? 何故一方的に翻弄されるような目に遭っているのか、今更ながら納得がいかなかった。
髭を残らず引っこ抜いて問いつめてやりたいが、それよりも先に今は熱を解放したい。
「……さっさと、しろよ!」
ばかあ!と罵ってやれば、罵られているにも関わらず、とろける様に甘い表情で見つめ返され、逆に怯んでしまった。
これ以上焦らされるのは堪らない。内心ほんの少しだけビクビクしていたが、フランスはすんなりと行動に移した。
陰茎に添えた手を絶妙な力加減で上下させながら、先端に舌を絡ませ、含む。カリをなぞるように舐められ、尿道をくすぐる様に舌で突つかれる。
「…ふぁ……あ、っ…!」
ゾクゾクと背筋を這い上がる快感に膝を寄せる。
無防備な内股をまた撫で上げられて、ひあっと声が上がる。
同時に先端を思い切り吸い上げられて……果てた。
「ああっ!!」
解放で一瞬止まったように感じた息が、また戻ってくる。
はぁはぁと荒く息を吐きながら目を開ければ、ごくりと喉を鳴らしてイギリスの吐き出したものを飲み込んだフランスが視界に入った。
精液はちょっと苦いけれども、マシュマロと一緒なら少しは甘かったのだろうか? 解放の余韻で上手く頭が回っていなかったとはいえ、そんなことを一瞬でも考えた自分に嫌気がさして、イギリスは頭を振った。
イギリスがバカな妄想に捕われていた間に、気がつけばひょいとフランスに足を抱えられていた。
「……」
じっと見つめるとフランスは控えめにお伺いをたてて来た。
「なんか妄想してる途中悪いんだけど、おにいさんもそろそろ気持ちよくなりたいの……」
いい? と小首をかしげて可愛らしく尋ねてくる……可愛い女の子ならともかく、千歳を超える男だ。キモチワルイ。
「……好きにすればいいだろ……」
げんなりしながら答えると、すっと手を取られ指先にちゅっとキスを送られた。
「メルシー」
……恥ずかしい奴でもある。
恥ずかしい行動は、やってる本人よりも見てる方が恥ずかしいことがある。イギリスは自分の頬がうっかり赤くなっていないか気になった。勘違いされては困る。
頬に手を当てて確かめている間に、フランスの指先が後ろに回った。
「……んっ」
ひんやりとした液体の感触に、いつの間にかジェルを取り出していたことを知る。いつもながら、エッチのときの行動の素早さとそつの無さに感心する、と同時に呆れる。
慣れた手つきで、イギリスに快感を与えながら、閉じた蕾を開いていく。ゆったりとした動作だが、確実にイギリスを追い上げ、綻ばせていく。
くちゅくちゅと音を立てながら抜き差しされる指、慣れた身体はそれだけで次に来るはずの行為を期待する。
後ろを弄られながら、ゆったりと前が反応していくのも感じる。もどかしくて、身を捩れば、後腔を愛撫しているのとは別の手が、腹を摩る。
そのまま肌の上を滑って来た手が、胸に残ったマシュマロをふにっと掴んで剥がす。
肌を離れていくその感触が不思議で見れば、ふわふわのホイップ状だったマシュマロは、いつの間にか自分の知っているマシュマロのように変化していた。
「……」
不思議そうにじって見ているイギリスの目に気付いたのか、フランスは目を細めながら、イギリスの口元にそれを運ぶ。
「……いい」
「まあまあ、そう言わずに」
自分の胸から剥がされたマシュマロなんていい気はしない。
でも、さっきまでと姿形を変えたマシュマロが気にならないわけではない。
優しく笑んでマシュマロの欠片を差し出すフランスの指に、
イギリスはしばし迷った後、ぱくりと食いついた。
口に含んだ白いそれは、まだ完璧に固まってはいないのか、
市販のものよりも柔らかい印象ではあったが、ふわふわと弾力のあるその感じは、確かにイギリスが知っているマシュマロのそれだった。
「……ましゅまろ……」
「うん、でしょ?」
イギリスのどこか幼い反応に、フランスはくつくつと笑った。
それから、残ったマシュマロを剥がし、雛に餌をやる親鳥のように、ひと欠片ずつそれを運んだ。イギリスは、不本意ながらも、それを口に含んだ……だって、美味かったのだ。
胸に残ったマシュマロをふたりで片付けてスッキリしたところで行為を再開した。
フランスの手により柔らかく綻んだそこに、フランスの熱く滾ったものが押し当てられる。
先端が奥を押し開く感触に、思わず詰めかけた息を意識的に吐いて力を抜く。
緩んだ身体にタイミングを合わせて、フランスが一気に身を進めて来た。
「!……あ…ああっ…」
衝撃に震える身体をフランスの手が宥めるようにさする。きゅっと閉じた目蓋にもキスを落とされ、ぼんやりと目を開く。
海を思わせる青い目が、こちらを見つめているのに、胸が変な風に音を立てた。おかしい。
乱れた髪を優しく後ろに梳きながら、フランスはゆっくりと動き出した。その動きに合わせて、イギリスの口から言葉にならない声が溢れ出す。
「……はっ……あ、んっ…」
自分の声の甘さに目眩を覚えながら、同時にその声に煽られる。自分も大概おかしくなってるよなと笑いたくなった。
でも、自分を最初にこんな風にしたのは目の前にいるこの男に違いないのだ。自分はきっと、悪くない。
「……坊ちゃん、集中してよ……」
「……うっせ、ばかあ……っ」
意識が逸れていたことを詰られた。不本意だ。
だって、考えていたのはお前のことなのに……
拗ねたように激しく動かれて、千年生きてもこいつはバカなままだと思った。
「……ひ、……やあっ!」
その下で喘いでる自分も大概だなあと思いながらも、この熱を手放すのは惜しい気がする。
フランスの手が伸びて、横を向き、シーツに頬を擦りつけるようにして喘いでいたイギリスの顎を捕らえる。
撫でるように触れたそれが促すままに顔を上げれば、すぐ側に迫った海の色。自分と隣国を結ぶ海の色を思わせるその瞳に、イギリスは嫣然と微笑んだ。
フランスの息を呑むような音が聞こえた後、イギリスを穿つ熱の質量がぐっと増した気がした。
「…っ、ああっ!」
いっぱいいっぱいまで満たされて、もうこれ以上は無理だ。
背中に回した手に力を込める、それでも足りなくて髪を引く。
空気が震えて、フランスが笑ったのが伝わったけれど、詰ってやる余裕はない。目だけで抗議すれば、分かってますとばかりに知った顔で微笑み返す。
フランスの指がイギリスの熱に絡む。思わず漏れた吐息すらも奪うように、フランスの唇が重なる。
激しく穿たれ、行き場のないお互いの熱に翻弄されながら、
ふたり同時に果てた……
目を覚ますと、隣にフランスの姿はなかった。
のそりと起き上がり、頭が起きて来るのをぼーっと待っていると、風呂上がりなのだろうか? 白いタンクトップにスウェットを履いたフランスがマグカップをふたつ抱えて戻って来た。
「ほら、飲めよ」
ぼんやりとした頭で差し出されるままにマグカップを受け取る。中にはコーヒーと、白い物体がふよふよと浮いている……
「……いらね……」
この上で溶けながら浮いているのは、昨日散々自身を悩ませたあの白いふわふわだ。正直もう見たくない。
「まあまあ、そう言わずに、折角入れたんだからさ」
ほら、美味しいから飲んでみ? おにーさんがマズいものをお前に渡したことなんてないだろう?
フランスがごちゃごちゃと畳み掛けて来た。まだ眠いので全部頭に入ってこなかったけれどもどうでもいい。
フランスの出す食べ物や飲み物は美味いということだけが頭に引っかかったので、仕方なく飲んでやることにした。
どうしても視界に入って来るあの白いのにはムカついたけれど、味は悪くなかった。ごくごくと続けて飲んでいると、隣に立つ変態男が笑った気がした。どうでもいいけど。
「お気に召しまして?」
「……悪くは、ねえな……しばらく見たくないけど」
昨日のプレイを思い出して、イギリスは眉間に深い皺を刻んだ。あんな目に遭うのはもう本当に懲り懲りだ。
白くてふわふわ甘いあの物体があんな風に使われるなんて思いも寄らなかった。
しばらく見たくはない、でも、これは美味い。
むむむ、と目の前のカップを見ながら考えていて思い出した。
「お前、お返し!!」
「ん?」
「ま、まさか、あれだけ好き勝手しておいて、あのマシュマロとこれだけじゃねーだろうな?!」
「まさか、そんなはずないじゃないの」
疑い深い眼差しで問うイギリスに、フランスは答えた。愛の国を舐めちゃいけないといつものセリフ付きだ。
「ちゃんと普通のマシュマロも用意してあるよ。味も色々揃えてるよ」
バチッとウインク付きで返されて、余程自分はげんなりとした顔を見せたのだろう……
「嘘だよ、いや、本当だけど……ちゃんと別のお菓子も食事も用意してあるから後で食おうな」
ぽふぽふと肩を叩かれて宥めるように言われた。
……何だか釈然としないが食事はありがたい。
「し、仕方ないから食べてやるよ!」
「メルシー」
と、いつものやり取りを繰り返した。
* * * * *
イギリスと濃密なホワイトデーを過ごし、自国に帰るイギリスを見送った後、フランスはいそいそと電話をかけた。
「あー日本? 元気?」
『おや、フランスさん、お久しぶりです……もしや、ホワイトデーの報告ですか?!』
日付で推測したのか、フランスが切り出す前に日本は話題を察知して話を振って来た。
「そうそう、それ! アドバイスありがとうな!」
『ということは、本当にマシュマロプレイを?!』
「おう、やったぞ〜」
『さすが、フランスさんです! キタコレ!!』
肯定すると、一気に日本のテンションが上がったのが、電話越しでも痛いくらいに伝わって来た。
イギリスには見せられない姿だ。
フランスは日本の盛り上がりに苦笑しつつも、自分も語りたくて仕方がない。
日本に問われるままにマシュマロをどんな風に使ってことに及んだかを説明した。
日本とフランスが裏でこんな会話を交わしていることなんて、勿論イギリスは知らない。知らなくていい。
日本もフランスも話すつもりはないのだから、これからもきっと、どこか鈍いイギリスは気付くことはない。
フランスはひとしきり日本とマシュマロプレイや、日本のゲームやアニメについて語った後、受話器を置いた。
最後にまた良いイベントやネタがあったら提供してくれることを約束することは忘れなかった。
以前出したコピー本です。
Honey Trapのバレンタインのお話の続きですが
私的メインはこちらでした(笑)
マシュマロプレイ!マシュマロプレイ!
リアリティを求め実際にマシュマロを作って
手に乗っけてしばらく様子見てたとか私はアホです\(^o^)/
2011.01.21 千穂