※ エロイ描写が混ざっています。
18歳未満の方の閲覧は堅くご遠慮願います。
素直じゃないから
「ひっ!」
入れられたまま急に身体の向きを変えられて、衝撃で喉の奥から悲鳴のような声が漏れた。
仰向かされ、仰け反った喉元を指先で撫でられ、ぞわりとした感覚が背筋を這い上がる。
それが快感か弱い部分を攻められたことへの本能的な恐怖なのか、それはこの際どうでもいい。
とにかく絡み付く指先が不愉快でイギリスはペシリとそれを払い除けた。
「……気持ち悪ぃこと、してんじゃねーよ」
中をぐいぐいと攻められていたことで上がった息のせいで、
言葉に今ひとつ迫力が伴わなかったことが悔しくて、チッと舌打ちをした。
払われた手を見たフランスは再びイギリスに視線を戻し、ニッと意地の悪い笑みを浮かべた。
「自分から誘って来たくせに」
「……」
確かに、フランスの泊まる部屋まで押し掛けていったのは自分だ。
だが、自分から仕掛けてはいない。
無言でいれば再びフランスの手が伸びて来て、イギリスはまた同じように振り払った。
「かわいくないねぇ」
叩かれた手を軽く振り、フランスが諦めたようにシーツに手をついた。
上から覗き込むように言われ、全てを見透かしているような瞳が嫌で目を背けた。
すぐ隣の腐れ縁にはこんなことをしても無意味なのは分かっている。
案の定、空気の振動でフランスが笑ったのが伝わったが、構いはしない。
「うるせぇ……休んでんじゃねーよ」
余計な口は挟まずに、こいつはただ気晴らしと性欲処理をしてくれればいいのだ。
尻に思いきり力を入れてさっさとしろと行為を促す。
うっ、と息を詰めたフランスにいい気味だ、ザマーミロと心の中で悪態を吐く。
「……随分と余裕じゃないの……坊っちゃん」
「……るっせぇーヒゲ……ぅあっ!」
吐き捨てるように言い、にやけた髭面をじろりと睨んだ。
もっと罵ってやるつもりが、仕返しとばかりにぐいっと奥の敏感な部分を突かれ、喉の奥からかはっと息が溢れる。
息苦しさから生理的にじわりと浮かんだ涙で視界が揺らぐのが悔しい。
こんなやつに翻弄されるのが癪で、苛立ちと憎らしさのままにギッと睨みつければ、中にいるフランスの質量がぐっと増した。
「っ……うあぁ、はっ!」
ギチギチとめいっぱいに拡げられて自分の喉から苦しげな息が吐き出される。
『何考えてやがる、この腐れ髭が!』『どうしてこのタイミングででっかくさせるんだ変態!』
罵りの言葉は後から後から浮かんでくるけれど、無様に開いてしまった唇が上手くそのセリフを紡ぎだすことは出来なかった。
「ちっ……くしょ、このっ、変態ヒゲ!」
「……くっ、変態はお互い様でしょーがっ」
攻防を繰り返す結合部分から全身に広がる感覚に翻弄されながら、互いに罵り合う。
欲を曝け出す身体は隙間なく繋がりながら、言葉は反発する磁石の様に交わりはしない。
なんて無駄な行為。
覆いかぶさる男をじっと見上げれば、髪は乱れ、汗を浮かべた姿が映った。
見た目を気にする普段の様からかけ離れた姿にほんの少し溜飲を下げる。
ざまあねえ、こいつもただのケダモノだ。
はっと嘲るように笑えば、気付いたフランスがこちらを見遣る。
瞬間不快そうに顰めた眉は、だがしかし、すぐに緩められた。
そして、瞳はどこか困ったような、仕方のないものを見るようなそれに変わる。
「……何だよ……」
何か言いたいことがあるんならさっさと言えよと目線で促す。
「……うん……あまり自暴自棄にならないでよ」
「……誰がだよ」
「坊っちゃんしかいないでしょ」
「……」
醜くおっ勃てたモノを自分の中にツッコミながら、バカみたいな寝言を言う。
「はっ……知ってるか、寝言は寝てるときに言うんだぜ?」
腐れワイン野郎はとうとう脳みそまで腐ったらしい、可哀想に。
憐れみの視線を向けるも、それに挑発されるどころか、いっそ困ったような表情を浮かべたフランスにイライラとした。
発作的に自らの喉を掻き毟りたくなって伸ばした手は、思いのほか素早い動作でフランスに捉えられ、シーツの上に縫い止められた。
「っ、放せよ!」
「ダーメ」
押さえつける手を振り払おうと力を込めれば、すかさず奥を突かれ、力を拡散させられる。
「……はうっ……く」
勢いよく突き上げられ、ビクビクと意思に反して身体が反応する。
自分のその反応が呪わしくて、抵抗するように力を込めるも、その反発は諸刃の剣である。
ぎゅうぎゅうと締めつけながら、奥深くにより一層リアルにフランスの熱を感じる。
「……うぁ、くっ…!」
ずくりと内臓を伝わる鈍い刺激に耐えるために、身を捩りながら息を吐く。
本当に、何でこんなことをしているのか。
気が狂っているとしか思えない。
ぼんやりと天井のあかりを眺めながら、揺さぶられる動きに身を任せていると、髭男の重い溜息が聞こえた。
「確かに今日のアメリカは……いつも以上に酷かったけどねぇ……」
行為の合間にフランスの口からふいに紡がれた単語にイギリスの身体がピクリと反応する。
それをチラリと見取ったフランスがさらに続けた。
「アメリカに冷たい態度とられる度にお兄さんのところに八つ当たりに来られても……」
……八つ当たりではない、憂さ晴らしだ。
「会議やなんかの度にこうして来られたんじゃ、お兄さんも折角の異国の綺麗な子たちと遊びに行く暇もないじゃない?」
……クソ髭の都合なんて知ったこっちゃない。
残念で仕方ないとばかりにわざとらしい溜息を吐くフランスに吐き捨てるように言う。
「うっせ、黙れヒゲ!」
視界に入る髭面が嫌でふいと顔を逸らせば、相手も呆れたような声音でひとこと。
「ホント、可愛くないねえ」
すでに何度も聞き慣れたそのセリフとは裏腹に、イギリスを押さえつけていた手の拘束が解かれ、
ベッドへと縫い止めていた手は肌を辿り、イギリスの頬へと添えられる。
そのまま、汗で頬に張り付いた髪を払い、額に浮かぶ汗を拭う様に撫で、髪を梳く。
全くもって意味が分からない。
だけど、決して気持ちが悪いわけではないので好きにさせてやる。
髪を梳き、頭を撫でられながら、先程とは打って変わった緩やかな動きで攻められる。
夜の波のようなそれは、決して激しい動きではないものの、じわじわとイギリスを浸食していく。
沸騰した頭が多少冷えた後には、逆にこうした動きの方がイギリスにとって効果的であるとこの髭は知っているのだ。ずるい。
波のリズムに乗ってイギリスを苛んだアメリカのセリフや態度がゆるりゆるりと蘇る。
鋭い言葉は寄せては返す波のように何度も角度を変えてイギリスを切り刻む。
自然と浮かび上がってきた涙を長くてきれいな指が掬う。むかつく髭野郎だが、こいつの手は嫌いじゃない。
溢れて玉になって転がるそれを、長い指が受け止める。それでも尚零れる淡い塩味のそれを、フランスは唇で吸い取った。
髭のザラリとした感触が頬を掠めて不快だ。
だけど、喉は喘ぎと嗚咽を漏らすので精一杯で制止の声を上げることは出来ない。
重なる体温と触れる手、瞼に落ちる唇の感触、波のリズムと共に与えられるそれはイギリスの胸に広がった悲しい波紋を押し返していく。
「……うっ、ひっ……くぅ……」
情けない音があかりの落ちた部屋に響く。
それでもまだ眩しい気がして両手で顔を覆うのを止められることはなかった。
緩やかな攻めは、イギリスが泣き疲れて意識を失うまで続いた。
涙の痕を残したまま、疲れきって眠ってしまったイギリスをフランスは見遣った。
部屋を訪れた時に深く刻まれていた眉間の皺は今は解消されているものの、毎度毎度飽きないことだと感心する。
いい加減に、諦めてしまえばいいのに。
自分のもとを離れてしまった弟のことを、このバカな隣国は気にかけずにはいられない。その度に、痛手を負うというのにちっとも学習をしない。
打ちのめされて向かう先は自分の所だというのに、まったくバカなことだ。
しかし、バカはこの眉毛だけではない。
自分も、そして、アメリカもだ。
今回の会議でアメリカが殊更にひどくイギリスに当たったのは、前回の会議の後にフランスの部屋から出て行くイギリスを目撃したからだ。
イギリスは気が付いていないようだが、フランスは射抜くような視線を浴びたので間違いない。
「好きなら、優しくすればいいのにねえ」
アメリカに向けたそのセリフは、そのまま自分にも跳ね返る。
不毛なことをしているのは自分とて同じだ。
千年も隣にいながらこの有様なのだから。
「時間があればいいってもんじゃないよねえ」
千年前から変わらない太い眉毛を見つめながら苦笑交じりに零す。
愛だの恋だのに疎いイギリスが真実に気付くのはいつだろうか。
とりあえず今は、イギリスの寝覚めが少しでもいいことを祈るばかり。
そして、そろそろ目覚めるであろう眉毛ちゃんのために、フランスは熱いコーヒーをいれてやった。
ずっと三つ巴チックなのが書きたかったんです^^;
アメリカとイギリスはデキてないです。
エチしてるけどフランスはイギリスに片想いです。
書いてる途中一向にイギリスがデレなくて焦った;
そんなに具体的描写ないけどR18指定にしときますね
2010.10.01 千穂